設計に携わってdesign of Alios

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いわき芸術文化交流館アリオスがいよいよ全館オープンいたします。設計監理に携わった者として感慨深い時を迎えようとしていますが、ここでその過程を振り返って概要について述べたいと思います。


設計するに当たって3つのコンセプトを掲げました。

  1. 平中央公園と一体となって市民に開かれた施設とすること
  2. 利用頻度の高い施設ほど中心に配置すること
  3. 分かりやすく、使いやすく、管理しやすいこと

敷地は平中央公園の南に隣接し、環境としては最高の立地と言えます。文化交流施設は市民の方々が利用する施設ですから、集まりやすく、親しみやすく、使いやすい施設であることが大切であると考えました。それには平中央公園との一体性、連続性、開放性が不可欠でした。幸いこの整備事業には公園の改修も含まれていたので、施設と公園を一貫して設計することができました。

この施設に求められた機能は、大ホール、中劇場、小劇場、リハーサル室、スタジオ、交流系施設、創造系施設等で、ひとつひとつが規模、内容共に非常に高規格なものでした。配置計画を練るに当たり中心に考えたのは交流ロビーでした。大ホールや中劇場はもちろんアリオスの主要施設ではありますが、決して頻繁に使われる空間ではありません。それに比べてスタジオ、リハーサル室、小劇場などは市民がいつも使う空間で活気があります。こうした施設を分かりやすく利用しやすく構成することが公共施設づくりには最も大切だと考えました。そのためには市民が集まる中心となる空間が必要で、そこを交流ロビーとしたのです。トップライトから光が滝のように流れ落ちる空間をイメージし「カスケード」と呼ぶことにしました。ここからはスタジオやリハーサル室、小劇場のロビーが見渡せます。例えばバンド練習をする若者達は見られることが刺激になり、また見る側の市民も刺激を受けます。「見る=見られる関係」が交流にはとても大切であるのです。そこでバンド練習室はひときわ目立つようにカスケードの吹抜空間に突出させました。

公園に面して1階にはレストラン、店舗、メインエントランス、キッズルーム等の賑わい施設を配置し、2階以上はホワイエとデッキバルコニー、デッキテラスを開放させて、公園と融合した明るく賑わいの見えるファサードを構成しました。景観的な配慮から、周辺の街並みと調和する20m前後の高さの基壇部を外周に回し、その中に彫刻的な形態の大ホールと中劇場が貫入する構成としました。夜になるとファサード全体が輝いて公園を明るく照らします。

劇場施設では訪れる人が非日常性を楽しめることが大切です。現実世界から切り離された劇場空間を彫刻的な黒い形体の中に閉じこめました。その壁面にはライン状の突起がランダムに付加され、外光や照明によってきらりと光り不思議な魅力を醸し出します。ホワイエのカーペットも紅葉や新緑をイメージしてデザインしたもので、自然の一瞬の美を封じ込めました。また、施設全体に手摺照明や床埋込照明を取り入れ日常的にはあまり見ない光の環境をつくっています。

大ホールは音楽主目的ホールとして位置づけられています。響きの良いシューボックス形状を基本として、音楽、演劇、オペラ、伝統芸能等、様々な演目に対しても最良の視覚・音響環境を実現することが求められました。3層のバルコニーを持ち、客席が側方まで回り込んで空間を囲みこむ客席構成を採用し、舞台と客席の親密度を上げています。反射板設定時には一体的な空間となるようにプロセニアムの段差を可能な限り無くし、側壁面と天井面が連続的な面を構成するように配慮しました。

豊かな響きを生むためには室形状をシューボックス型にしただけでは不十分であり、壁面や天井面からの豊かな初期反射音が客席に返って来ることが必要でした。そのために側壁を全面的に鋸型断面とし反射音を下方に返す仕組みを考えました。側壁は質量のあるPC板で構成し、ジグザグ断面と更にその表面にノミで削りだしたような丁寧な細工を施すことで非常に明瞭度が高く豊かな残響を作ることに成功しました。

空間はヴァイオリンの名器ストラディバリウスを思い浮かべ、ホール全体が美しい響きに「包まれる」感覚を表現しています。2つのシーリングスポットを意図的に空間に浮遊させシャンデリア効果をもたせました。正面反射板には空間全体の焦点となる彫刻的な意匠を施してコンサート時の華を演出しています。

中劇場は演劇主目的の劇場ですが、客席もプロセニアムの額縁も照明ブリッジも移動可能な画期的な機構を備えています。これによってプロセニアム形式、スラストステージ形式、ポディウム形式、能舞台形式等の様々な舞台設定が可能となります。劇場の空間は、舞台に集中できるように全体的に濃灰色を基調としています。

アリオスは芸術文化の育成・発展といわき市の未来にとってかけがえのない施設となることは間違いありません。この施設の設計に携わる貴重な機会を得たことを設計者としてこの上ない誇りに思い感謝いたしております。

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