石井竜也氏インタビューinterview Tatsuya Ishii

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いわきアリオスがシンボルマークのデザインをお願いしたのは、米米CLUBのヴォーカルとして活躍しながら、映画監督、デザイナーとしても活動している石井竜也氏。

石井氏は北茨城の出身で、いわきと同じ「ときわ路」で幼少期を過ごしました。しかもお母様はいわき市の出身。初の映画監督作品『河童』(94年)も、いわき市内各所でロケを行いました。

いわきとのご縁が深いアーティストということで、ロゴマークのデザインをお願いしました。「幼少の頃よく訪れたいわきには、『緑豊かな場所』というイメージがあった」という石井氏。ロゴには美しい緑の色彩と葉っぱのモチーフが使われています。

自然が人生を教えてくれる

ときわ路が石井少年に与えた影響とは?

僕が育ったのは、海のすぐ近くの町です。港町や漁師というと粗野なイメージがあるかもしれませんが、彼らほど繊細な人はいないと思うんです。風の音や水の音から天候を読み取ったり、漁の出来不出来を予測したり……。ワイルドさの裏にはものすごく繊細な、自然をよむ人間の英知が流れているんですよ。で、そういう感覚の素晴らしさや、そこにあるロマンは、田舎で育たないとわからない。

一度、ある漁師のおじいちゃんに絵のモデルをお願いしたことがあります。手なんてもう節くれだっちゃってね、グローブみたい。だけど、その図太い指が、ものすごく細い網を編んでいくんですよ。それがもう、涙が出るほど繊細で。

で、そのおじいちゃんがボソッと言ったんです。「サラリーマンはいいよな、自分の終わりを誰かが決めてくれる」って。漁師さんは、網を自力で引き上げられなくなった時、自分で「明日から俺は漁師ではいられない。もうやめよう」と決めるんですって。「それはものすごく辛いことなんだよ」って。その時、この人は、いつ終わりがくるかわからない不安と闘いながら今まで生きてきたんだなって思って、そのおじいちゃんを抱きしめたくなるくらい、いとおしく感じましたね。

田舎はそういうことを教えてくれる。人の生き方とか、人生観とか、ちゃんと自然に照らし合わせて、そのレンズで人生を見ることができるんですね。

「都会人」はどこにいても「都会人」

それでも都会に憧れる若者は多いです。

世界に目を向けてみたら、日本なんか、そのものがど田舎なんですよ(笑)。パリやニューヨークに行ってごらんなさい。全然違いますから。そうやっていろんな世界を見ると、「日本の○○で育ったから俺は田舎もんだ」とか言ってるのが、すごくくだらなく思えてきますよ。そんなことを気にするより、「日本人である」自分を誇りに思うことを勉強した方がいい。どこで育とうが、どこで生きようが、「都会人は都会人」なんです。

「都会人」というのは、たぶん、考え方だと思うんです。自由で、柔らかい発想を持っていて、他人にやさしく自分に厳しく、生活をエンジョイできる感覚を持っている人。そして他人が見た時に「あの人、カッコいいな」って思う人、それが都会人だと思います。東京にも「田舎もん」はいっぱいいます。どこに住んでいても関係ない。こんな小さな国じゃないですか。アリゾナ州ほどもないですよね、日本は(笑)。

少数派の意見を無視しない

アーティストとして常に時代を切り拓いてきた石井さん。「長生き」の秘訣は?

マイノリティの意見を無視しない。これはもう絶対! 大事ですね。「そんな、お前、ライブに来た1万人のなかでそう思ったの、たったの10人だろ!」って言っちゃったらおしまいなんです。10人言ったってことは、その10倍はそう思った人がいるって考えた方がいい。大きいですよ、1万人の中で100人が「ダメだな」って思ったっていうのは。その100人が何人に話すと思います? 「いい」と思った人はね、意外と言わないんですよ。嫌なことの方が人にしゃべりやすいの。だから、そういう人たちの意見を絶対に無視しないことが、「長生き」の秘訣だと思いますね。そう意識すると、自分たちも飽きずにやっていけます。

自分の「体温」を信じる

石井さんがアーティスト活動の中で大切にしているものは?

僕のスタッフにはよく、「自分がカッコ悪いなって思ったことは、誰が見てもカッコ悪いと思うよ」って言うんです。やっぱり、自分がカッコいいとか面白いと思うことは、みんなもどこかで同じように感じるんですよ。だいたい人間なんてね、映画館などでも同じシーンで泣いたり笑ったりするじゃない? そういう感覚を大事にしたいですよね。自分の感覚というか、体温を信じたいと、いつも思っています。

いわきアリオスだけの「色彩」を

いわきアリオスに望むことは?

どこがライバルとかいうのではなくて、いわきアリオスだけが持ちえる何かを持つべきでしょうね。「アリオスまで行く価値がある」というホールになるといいですよね。たとえば、そこに行くといろんな情報が得られるとか、クラシックだけじゃなくていろんなものが聴けるとか。そういうアリオスならではの「色彩」を持ってほしいですね。1年や2年では無理でしょうけど、5年、10年と時間をかけて、そういうイメージを作るのはすごく大事だと思います。そして、それを守り抜くこと。

最初は、いろいろ実験してみるのもいい。ただ、やっぱり一度決めたことを守っていくってことが、意外と大切なんです。もちろん、いろんな波はあると思いますよ。でも「コレ!」と決めたものをちゃんと守り続けていけば、それがホールの特色として認識されますから。

たとえば、お金をかけてつくっても、誰も行かない施設もある。建物だけじゃダメなんですよ。その中で何をやっているのか、どんな繊細なことが行なわれているのか、スタッフたちがどれだけ愛情を持ってそこに接しているのか、というところが一番大事ですよね。

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